運動が健康に良いということは、これまでに多くの研究結果から報告されており、ご存知の方も多いでしょう。
しかし、どれくらいの運動量が健康のために推奨されているのかについては、知らない方もいるのではないでしょうか?
今回は厚生労働省が報告した「健康づくりのための身体活動基準2013」から、運動の効果や健康のために推奨される運動量、運動時の注意点について紹介します。推奨される運動を行って、健康的な身体を手に入れましょう。
運動による健康へのメリットとは
運動には下記のような健康のメリットがあると報告されています。
- 生活習慣病の発症および生活習慣病を原因とする死亡リスクの低下
- 生活機能低下の予防
- 腰痛や膝痛の改善
- 風邪にかかりにくくなる
- 自立した生活の維持 など
なぜ運動にこのようなメリットが期待できるかというと、運動不足で身体を動かさない時間が日常生活で多くなると、肥満や筋力の低下が生じるからです。
運動不足になると内臓脂肪が身体に蓄積されて、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を発症します。
すると、血管が硬くなる動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞、腎不全などを発症するリスクが高くなると報告されているのです。
また、筋力が低下すると転倒するリスクが高くなると報告されており、骨が弱い高齢者の方が転倒すれば、骨折してしまう可能性があります。
このように運動不足による肥満や筋力低下は、私たちの健康に大きな悪影響を及ぼす可能性が高いです。
そのため、普段から運動を行って、肥満や筋力低下を避けることが健康のためには欠かせません。
18〜64歳に推奨される身体活動量の基準
運動は健康のために良いと知っていても、どのくらい運動すれば良いのかわからない方もいるでしょう。
厚生労働省の報告によると、18〜64歳の身体活動量と運動量の基準は次のとおりです。
- 身体活動量の基準:週あたり3メッツ以上の身体活動を23メッツ以上行う
- 運動量の基準:週あたり3メッツ以上の身体活動を4メッツ以上行う
メッツとは運動強度の単位のことです。
安静にしているときのエネルギー消費量を1とした時に、何倍のエネルギーを消費しているかを表します。
それぞれ目標となる生活活動や運動の例は、次のとおりです。
- 身体活動
- 普通歩行・犬の散歩:3.0メッツ
- 掃除機・フロア掃き:3.3メッツ
- 自転車に乗る・階段を登る:4.0メッツ
- 運動
- ボウリング・ピラティス:3.0メッツ
- 自重を使った筋力トレーニング・自転車エルゴメーター:3.5メッツ
- 水泳:4.8メッツ など
上記のメッツは、それぞれの生活活動や運動を1時間行った時のメッツとなります。
1週間あたりの身体活動量は23メッツ以上を推奨しているため、1日あたり約3.3メッツの身体活動量を目指すことが望ましいです。
具体的には、普通歩行以上の強度の身体活動や運動を毎日60分行うことを目安にすると良いでしょう。
65歳以上に推奨される身体活動量の基準
続いて、65歳以上の基準を紹介します。
65歳以上の身体活動量と運動量の基準は次のとおりです。
- 強度を問わずに、週あたり10メッツの身体活動を行う
強度を問わずにとあるため、横になったままや座ったままにならなければ、どのような活動でも良いとされています。
具体的には、次のような家事や運動で基準を超えることが可能です。
- 皿洗い:1.8メッツ
- 洗濯、ゆっくりした歩行:2.0メッツ
- 子どもと遊ぶ:2.2メッツ
- 座ってラジオ体操をする:2.8メッツ
週あたり10メッツ以上活動することで、身体活動量が少ない人に比べ、生活習慣病と生活機能低下のリスクが21%低かったと報告されています。
時間に換算すると毎日40分、身体活動を行う計算です。
ただし、この基準は高齢者の身体活動不足を予防するための基準となります。
より健康的な身体を維持・向上させるためには、軽い筋力トレーニングや早歩きなどの3メッツ以上の運動を積極的に行いましょう。
すでに生活習慣病がある人が運動を行うときの注意点
健康な方が今後の健康予防のために、身体活動量や運動量を増やす場合には特に注意することはありません。
しかし、既に高血圧や糖尿病、脂質異常症の方が、健康目的のために運動を行うときには注意が必要となります。
なぜなら、運動で身体に負荷がかかることにより、過度な血圧の上昇や低血糖、不整脈、心不全などのリスクがあるからです。
そのため、すでに生活習慣病をお持ちの方は、かかりつけの医師に相談しておきましょう。
また、筋力トレーニングやランニングなどを行う際には、正しいフォームで行わなければ、思わぬ怪我をする可能性があります。
初めて運動をする場合は、指導者に適切なフォームを指導してもらうと安全です。
普段の生活に運動を取り入れて、健康的な身体づくりをしましょう。
引用元一覧
[1]厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpqt.pdf
[2]健康長寿ネット「転倒とサルコペニア」
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/rouka/tentou-sarcopenia.html
監修者からのコメント
内科医
運動の重要性は昔から言われてきましたが、特に最近はサルコペニアという概念が広まりつつあることで重要性が再確認されるようになってきました。加齢による筋力の低下や筋肉量の減少によって立つ・歩くなどの日常生活に支障が出て、介護が必要な状態に近づいてしまう状態がサルコペニアです。高齢の方の15%以上がサルコペニアに該当するとされており、高齢化が進む中、国全体で対策が必要な状態になっています。特に重要なのは足の筋力を落とさないことです。なるべく歩く、階段を上る、スクワットをするなどして今より筋力が落ちることを防ぐようにしましょう。