痛風に気をつけよう

痛風に気をつけよう

痛風という言葉を聞いたことがあるでしょうか。読んで字のごとく、「風が当たる程度でも痛い」という症状のひとつです。
サラリーマンの方であれば、忘年会シーズンにはイヤでも思い浮かべる単語かもしれません。痛風を経験した方ならば、あの痛みに怖い記憶がひもづいて気分が落ち込む方もいるでしょう。

ここでは痛風について正しく知って、正しい予防を正しい食生活とともに実践できる手助けを目的にしています。

楽しい飲み会での笑顔のためにも。そしてお酒のつまみに健康の話題が出たら、痛風についての小話などおひとついかがですか?

尿酸と痛風

「風が当たっても痛い」「痛くて布団を掛けられない」「歩くこともままならない」

たくさんの表現方法が古くから伝えられている症状があります。

もちろん国によっても表現方法は異なりますが、その多くは腫れ上がった足や激しい痛みといった症状を訴えていることが多いかと思います。

痛風という症状は、体の中にある“尿酸”という成分が悪さをしている症状ともいえます。

尿酸は体の中で合成されたり、食べ物として体内に取り込まれたりしますが、最終的には尿中に排泄されます。

本来ならば尿に排泄されてバランスを保っているはずの尿酸が、体の中に多くある状態を“高尿酸血症”と呼びます。

尿酸値が高い状態で何かしらのきっかけがあると、尿酸が関節で結晶化して固まってしまいます。

その石のようになった尿酸に対して、体の免疫は激しく炎症反応を起こして排除しようとします。

この状態こそが“痛風”と呼ばれる発作になります。

足の親指の付け根に発生しやすいといわれますが、これは尿酸の結晶化が温度の低い部分で起こりやすいことも原因のひとつとされています。

確かに足の親指の付け根は体温が低い部分ではありますが、膝や足関節など、全身の他の関節でも痛風は起こります。

それでは人体と尿酸の関係について見ていきましょう。

プリン体とは何だろう

地球上で営みを行う生物は、私たち人間を含めて必ず“遺伝子”を持っています。

DNAという遺伝物質に記録された情報から、さまざまなタンパク質を作っていきます。

つまりDNAはタンパク質の設計図ということもできるのです。

私たちは遺伝物質にDNAを、一部のウイルスなどでは遺伝物質にRNAを使っています。

あれ?痛風の話なのになぜ遺伝子?

と思うことでしょう。

実はここで登場したDNAやRNAと痛風には深いつながりがあるのです。

私たちが体中の細胞にたくさんのDNAを持っているように、私たちが食べる生物もたくさんのDNAを持っています。

DNAを例に挙げると、DNAには4種類の塩基と呼ばれるものがあって、そのうちの2つが“プリン環”という構造を持っています。

その構造を持った物質のことを“プリン体”と呼びます。

プリン体はDNAを作るために必要な物質ではありますが、多すぎても困るので体の外へ排泄していきます。

主に尿と一緒に排泄するのですが、プリン体を捨てられる形にした物こそが、“尿酸”というわけなのです。

どこからやってくるプリン体

プリン体は遺伝子に含まれていることが多いという話をしました。

中学校や高校の生物学を思い出してみましょう。

遺伝子はどんな場所にあるでしょうか。

そうです。

遺伝子は細胞の中の“核”という部分に、大切に大切にしまわれています。

つまり私たちが食べる物は、たくさんの細胞からできています。

細胞が多いということは核も多いといえます。

もちろん生物の種類によってDNAの量は変わってきますが、一般的には細胞がぎっしり詰まっている食べ物のほうがプリン体が多い傾向にあるといわれます。

確かに資料を見てみると、お肉の部分よりも肝臓などの臓器の方がプリン体が多いようです。

他にも魚の卵も多くのプリン体が含まれています。

焼酎ならOKですか?

痛風発作はお酒を飲んだ後に起こることが多いともいわれます。

「焼酎はプリン体が少ないから安心だ!」

と焼酎をがぶ飲みする方もいるようですが、これは完全には正しくありません。

たしかにお酒も生物の細胞から作られますので、お酒に含まれるプリン体も問題になります。

しかしアルコールには尿酸の合成を促進したり、尿への排泄を阻害することが確認されています。

またお酒を楽しく飲むことで、お酒を飲みながら食べるツマミからもたくさんのプリン体を摂取することがあるでしょう。

さまざまな要素が重なって、結果として尿酸が体内で濃縮されていってしまうことが痛風発作の原因となります。

プリン体の少ない発泡酒や焼酎を意識して飲むことは痛風の危険性を下げる可能性はありますが、それだけが原因ではないことも覚えておきましょう。

激しい運動にもご注意

尿酸は尿と一緒に体外へ排泄することでバランスを保っています。

ここでひとつ気を付けておきたいことがあります。

体が尿をうまく作れない状態や、脱水状態で尿量が減った状態は、結果として尿酸値を高めるおそれがあるということです。

たとえば水分をあまり摂らずに山登りなどの汗をかく運動をした後や、脱水症状に近いほど大量の汗をかく激しい運動。

こうした運動の後にはしっかりと水分補給をすることも大切となります。

他にも尿がうまく作れない体の状態なども考えられます。

こうした状態は医師に相談をする必要があるでしょう。

痛風と深いつながりのある花

これは余談となりますが、ピンクの綺麗な花です。

心が落ち着くようなスッとしたフォルムも魅力的だと思います。

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地方にお住まいの方には、ギョウジャニンニクとの誤食による食中毒を起こす花として知られているかもしれません。

この花の名前をイヌサフランといいます。

根はジャガイモのような形をしていて、誤って食べると吐き気などを引き起こす、注意が必要な植物です。

もちろん葉や花、茎も毒があります。

その毒は“コルヒチン”というアルカロイドを多量に含んだ毒です。

実はこのコルヒチン、古くから痛風の薬として利用されてきた歴史があります。

現在でも痛風の治療薬として使用されることがあります。

古くは「贅沢病」や「貴族病」とも呼ばれた痛風ですが、ときの貴族は痛風の痛さに怯えていたのでしょうか。

それでも贅沢な食事を控えるのではなく、部下にさまざまな薬の研究を進めさせたのでしょうか。

そう考えると歴史的にも、痛風があったからこそ植物由来の創薬研究が一気に進んだのかもしれませんね。

まとめ

痛風と尿酸の関係についてお話をしました。

正しく痛風を知ることで、食生活の改善につなげていきましょう。

せっかくの楽しいお酒も、痛風の恐怖で酔いが覚めてしまえば悲しい思い出となってしまいます。

健やかな生活を送るためにも、楽しく明るくみんなで学んでいきましょう。

くれぐれも自己判断はせず、少しでも体調に異変を感じた場合や不安に思った際には医師への相談をおすすめします。

早期発見ができれば早期治療にもつながります。

もし病気がなかったとしても、医師から正しい食事やお酒との付き合い方の指導を受けて、健康的な生活を送りましょう。

引用元一覧

監修者からのコメント

内科医

痛風は関節炎の中で最も一般的であり、世界的にみても発症者や有病者が増加しています。食品やお酒からの原因物質のとりすぎに加え、腎臓機能の低下も原因のひとつです。腎臓機能の低下は尿酸の排泄を遅らせ、それによる高尿酸血症は腎臓の機能を低下させ・・・といった悪循環に陥ります。生活習慣病のひとつであるメタボリックシンドロームも、尿酸の排泄を遅らせてしまうというので、ただ単純にお酒を控えればよいわけではないことを覚えておきましょう。尿酸値が高いだけでは自覚症状が特にないことも、放置してしまう要因のひとつです。ぜひ、高尿酸血症が引き起こす辛い症状を思い浮かべて対策を取るようにしましょう。