新型コロナウイルス感染症におけるカテキンの効果

新型コロナウイルス感染症におけるカテキンの効果

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっています。ソーシャルディスタンス、3密回避、定期的な手指の消毒、私たちの生活は大きく変わってしまいました。新型コロナウイルスの存在が報告されてから間もなく2年を迎えようとしています。ウイルスと共存していくために、私たちが日常生活で出来ることはないのでしょうか?本記事では、私たちの生活に欠かせない毎日の食事の栄養成分に注目し、新型コロナウイルスの抑制効果が期待されている、茶カテキンについて紹介します。

新型コロナウイルスとは

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)とは、SARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)であるSARSコロナウイルス2 (英名: severe acute sapiratory syndromecoronairus2: SARS-Cov-2)を要因とした新型の感染症です。2021年8月現在、世界の累計感染者数は約1億9千万人、累計死者数は約400万人におよびます。その詳細な起源は不明ですが、2019年12月以降に、中国湖北省武漢市を中心に発生し、全世界に広まったと言われています。またその症状は、感染しても無症状の場合、風邪程度の場合、肺炎症状を呈する場合、重症化、重症化して死に至る場合と様々であることが特徴として挙げられます。感染経路は飛沫感染、空気感染、接触感染、母子感染、虫に刺されることによる感染などがあり、感染防止のための新しい生活様式として、ソーシャルディスタンスや3密回避などが唱えられる様になりました。

現在の治療法

新型コロナウイルスを直接標的とする治療薬は無く、治療法は確立されていません。そのため、熱を下げる、酸素を供給するなどの対処療法を行いながら、自分の免疫力でウイルスに打ち勝つしかありません。しかしながら、重症化した場合は対処療法だけでは不十分な場合もあり、効果的な治療薬や治療法の確立が早急に求められています。新型コロナウイルスに対する治療薬は、現在既存の薬剤の中から有効なものを探索する方法が一般的です。臨床試験レベルのものから基礎研究レベルのものまで様々な研究が行われており、今後有効な治療薬が見つかることが期待されています。

新型コロナウイルスに対するカテキンの効果

新型コロナウイルスに対する有効な治療法の開発が求められる中で、既存の治療薬の探索以外に、食品成分によるウイルス抑制作用の研究が行われています。日本においても、京都府立医科大学の研究グループが、緑茶成分であるカテキンがウイルスに対して一定の抑制効果を示すことを明らかにしました。カテキンはお茶に含まれるポリフェノールの一種で、お茶特有の苦み成分の一種です。研究では、SARS-Cov-2ウイルスを紅茶、緑茶、焙煎緑茶、ウーロン茶で1時間処理すると、ウイルス活性は検出できないレベル(約100分の1)まで減少することを報告しています。しかしながら、茶カテキンが腸で吸収される割合は極めて低く、血液中には移行しづらいと言われています。このことから、お茶を飲んでも感染したコロナウイルスの能力を低下させる効果は期待できません。しかしながら、お茶を飲んだ際に、口腔内のコロナウイルスを抑制できる可能性はあります。よって、お茶を飲むことで、飛沫感染を抑制する効果が期待できるかもしれません。例えば、集団で食事をする際に各々がお茶を飲むことで、飛沫感染のリスクを下げることが出来る可能性があります。私たち一人一人が毎日の生活にこれまで以上に気を配ることで、コロナウイルスの感染率の低下につながるかもしれません。まだ研究室レベルでの研究の段階ではありますが、今後ヒトでの研究が進められていくとのことです。

引用元一覧

  • 新型コロナウイルスのウイルス学的特徴 増田道明 モダンメディア66刊11号2020
  • Expression of the SARS-CoV-2 Entry Proteins, ACE2 and TMPRSS2, in Cells of the Olfactory Epithelium: Identification of Cell Types and Trends with Age. Katarzyna Bilinska, Patrycja Jakubowska, CHRISTOPHER S. VON BARTHELD, and Rafal Butowt.
  • ACS Chemical Neuroscience. 2020
  • Significant Inactivation of SARS-CoV-2 In Vitro by a Green Tea Catechin, a Catechin-Derivative, and Black Tea Galloylated Theaflavins. Molecules. Eriko OhgitaniMasaharu Shin-YaMasaki IchitaniMakoto KobayashiTakanobu TakiharaMasaya KawamotoHitoshi KinugasaOsam Mazda. 2021.
  • 茶カテキン類と生体成分との分子間相互作用. 中山勉. 日本獣医生命科学大学研究報告. 2013.

監修者からのコメント

内科医

カテキンは昔から「お茶でうがいすると風邪予防になる」などと言われており、少なからず感染症の広がりに待ったをかけてくれる存在のようですね。また近年では白血病の治療薬に使えるのではないかという報告があったり、色々な悪性腫瘍(癌)の予防に有効ではないかという研究がされていたりします。今後、カテキンの秘められた効果が明らかになってくることを期待したいですね。