関節リウマチ(RA)と痛みのはなし

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関節リウマチ(RA)と痛みのはなし

年齢を重ねるごとに筋力は低下をし、関節に痛みを覚えることは多くの方が経験することだと思います。

しかしそうした自然の流れがもたらす痛みなどとは別に、関節に悩みを持つ方もおられます。

目が覚めたあとに節々がこわばり、何やら体が火照るような気がする……。

指や手首が痛み、家事をすることがたいへんになってしまうこともあるでしょう。

治療法が確立していない時代には、そのまま指の関節などが破壊、変形をしてしまう方も少なくありませんでした。

年齢のせいだから……誰でも起こるんじゃないの……。

もしかしたらそのつらさは治療が可能な症状かもしれません。

ここでは「関節リウマチ」という病気にフォーカスを当ててお話を進めていきましょう。

1.関節リウマチ

古くから知られる関節の病気のひとつに、「関節リウマチ(RA)」があります。

ギリシア語で「ロイマ(rheuma)」=「流れ」を意味する言葉を語源に持ちます。

そのころは体を流れる悪い液が滞ることで、痛みなどが出ると考えられていました。

この病気は老化による体への影響とは異なり、自分の「免疫」が自分自身を攻撃してしまう「自己免疫性疾患」のひとつです。

免疫は細菌など外部からの敵を排除するために、なくてはならない人体が持つ防御機構です。

しかし時として、自分自身の正常な細胞を敵と認識してしまい、細胞を壊すことでさまざまな症状を引き起こします。

自己免疫性疾患には他にも全身性エリテマトーデス(SLE)や重症筋無力症(MG)などの病気も知られます。

関節リウマチではとくに自分の関節に対して攻撃をしてしまう病気で、関節がスムーズに動くためのメカニズムにダメージを与えてしまいます。

その結果、体のいろいろな関節に炎症と痛みが出てしまう病気です。

なぜ自分の細胞を敵と認識してしまうのか。

過労やストレス、感染症などの可能性が見出されていますが、明確な理由はまだわかっていません。

2.一般的に行われる血液検査

医師の診察によって関節に腫れなどがみられる場合には、血液検査で原因を探っていくことがあります。

リウマチかどうかを識別する際に注目される検査項目の一部をご紹介します。

・血沈

血液の中に含まれる赤血球は他の成分に比べて重いため、重力の影響で底へと沈んでいく性質があります。

炎症が起こっている際には沈む速度が速くなる傾向があるので、炎症の有無や炎症の重さを確認することができます。

・CRP

炎症性蛋白(C反応性蛋白)ともいう検査項目で、体の中で炎症が起こっている場合にはこの数値が上昇します。

とある細菌の成分に強く反応することから、細菌感染症による炎症ではとくに強く上昇する傾向にあります。

しかし他の原因による炎症によっても上昇するため、なんの原因で炎症が起こっているかを識別する必要もあります。

・リウマトイド因子(RF)

関節リウマチの方の約75%で陽性となる検査項目ですが、健康な方や別の病気の方でも陽性になることがあります。

また関節リウマチの方でも陰性となる方もいます。

この検査項目だけで関節リウマチの診断に用いることはありませんが、指標のひとつとして役立てることができます。

・抗CCP抗体

CCP(環状シトルリン化ペプチド)という物質に対する抗体を測定する検査です。

リウマチの早い段階から出現することが知られていて、早期発見にも役立ちます。

この数値が高い患者さんは関節へのダメージが出やすいこともあり、治療方法の決定にも参考とされることがあります。

これ以外にもいろいろな血液検査やX線撮影、尿検査などの結果を踏まえて、医師が総合的にリウマチの診断を進めていきます。

3.痛み緩和の歴史

ヒポクラテスの時代からリウマチの存在は知られていたといわれます。

2000年以上も前から人類は関節の痛みと戦っていたと考えると、長い間、さまざまな生活の知恵も育まれたことであろうと推測できます。

実際に西洋では、セイヨウシロヤナギの樹皮から抽出した成分を用いてリウマチの痛み止めとして使った記録も残っています。

その後、17世紀ごろには成分が分離されて薬として発展していきました。

それでは日本においては、どのように痛みと付き合ってきたのでしょうか。

たとえば江戸時代であれば高価な薬として服用されていた記録もあるのですが、その成分についてここで明記することは憚られます。

現在では厳しく取り締まりがなされる成分とだけ申しておきましょう。

確かにそのような薬として販売もされていましたが、誰しもが購入できるような代物ではありませんでした。

そこで民間療法として広く知られていた方法が「湯治」です。

日本では湯に浸かる文化があり全国に温泉があることからも、温泉に浸かって症状とうまく付き合う方法が一般的でした。

実際に温泉の効能に「リウマチ」と表記のある温泉も数多くあります。

温泉に入ることで関節リウマチが治ることはありませんが、慢性的な痛みやこわばりについては、症状が緩和されるとの話があります。

仕組みについては、温泉の温熱効果で血流がよくなり、痛みが和らぐということであれば十分に考えられるでしょう。

ただし注意が必要です。

激しい炎症が起こっているときや症状が重いときには、温泉に入ることで症状が悪化してしまうことがあります。

くれぐれも自己判断をせず、医師と相談のうえでうまく付き合いましょう。

関節リウマチ(RA)と痛みのはなし

まとめ

関節リウマチは女性に多くみられる病気で、中年以降に発症することも多くあります。

加齢によって関節の痛みなどはよくみられる症状のひとつですが、「年齢のせい」、「気候のせい」などの自己判断をすることは避けましょう。

気にかかる場合には医療機関を受診し、早期発見、早期治療につなげることができれば、適切な治療によって関節の破壊を免れることもあります。

悪い液の「ロイマ(rheuma)=流れ」と考えられていたリウマチですが、自然に囲まれた温泉に浸かって血液の「流れ=ロイマ(rheuma)」を整えることもまた、現代社会の疲れを癒すには効果的なのかもしれませんね。

参考URL

監修者からのコメント

内科医

若くして発症される方もいるのですが、中高年の方で関節リウマチに悩まされている方は多いと思います。痛みだけでなく関節の変形や、関節の可動域の低下まで、徐々に生活に支障が出てきてしまいます。現在はステロイドだけでなく、生物学的製剤や分子標的薬といったさまざまな種類の治療薬からその方に合った方法が選ばれます。痛みや症状をコントロールしながらうまく病気と付き合っていきましょう。関節リウマチをお持ちの方に注意していただきたいのが合併症です。眼や肺、皮膚など関節以外にも症状が現れることがあることがあります。少しでもおかしいなと思ったらリウマチの合併症かもしれませんので主治医に相談するようにしましょう。