炎症性腸疾患と食事との関連性~新しい知見からみえた答え~

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炎症性腸疾患と食事との関連性~新しい知見からみえた答え~

難病指定されている炎症性腸疾患ですが、最近の研究結果では腸内フローラを整えることが症状の改善に繋がるのではないかとされています。今回の記事では炎症性腸疾患と、私たちと切っても切れない食事との関係性についてご紹介します。

炎症性腸疾患ってどんな病気?

おなかが痛いとか下痢が苦しいなど感じたことはあるでしょうか?ご飯を食べすぎたり、少し古いものを食べたりしたとき、お腹を出してクーラーのきいている部屋で寝たときなど様々な理由でおなかに関連する症状を感じたことがあると思います。
通常、短期的な症状で治まることが多い症状ですが、下痢、腹痛、血便などの症状を慢性的に生じている病気を炎症性腸疾患といいます。
具体的には、潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)とクローン病を指す疾患です。
難病疾患にも指定されており、両疾患合わせて日本に約22万人もいるとされています。
年々増加傾向にある疾患であり、安倍晋三元首相も潰瘍性大腸炎として診断を受け治療を継続していることが知られています。

腸と食事の関係性とは?

私たちのおなか(腸)は、大きく小腸と大腸に分かれます。腸には、乳酸菌やビフィズス菌など様々な種類の腸内細菌が存在しており、この集団を腸内細菌叢(腸内フローラ)と言います。

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腸内フローラに存在する腸内細菌は、食事の分解や栄養素の合成に関与しています。最近では、細菌やウイルスに対する免疫機能や脳の機能に影響を与えることが研究により明らかとなってきています。

腸内細菌に良い影響を与える食事とは?

結論からいうと、魚や植物由来食品は腸内細菌に良い働きをするということが明らかとなりました。
ここでいう良い作用というのは、抗炎症作用といって、体に対して異物が侵入したり、障害を与えることで体にとって好ましくない刺激により引き起こされる生体防御的な作用を抑制することを指します。
よって、魚、野菜、果物、ナッツ類、食物繊維が豊富に含まれる食品を多く摂取すると抗炎症作用を示す短鎖脂肪酸が大量に産生されるようになります。

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腸内細菌に悪い影響を与える食事とは?

体に悪そうな食事を考えるとどのようなものを想像しますか?
腸内細菌に悪い影響を与えるものとしては、お肉、スナック菓子、フライドポテトのようなファーストフードを指します。これは、一概に食べてはいけないというわけではありません。ファーストフードを好む人は、相対的に食物繊維を取らない傾向にあることがわかっています。そのため、短鎖脂肪酸を効率よく作ることができないために腸内フローラに悪影響を及ぼす可能性が高いことが言われています。
また、食事が一般的に五体栄養素で示されるようにバランスが大切になります。お肉だけでも野菜だけでもダメです。これが良くないとある銘柄を示されたからといってそれを摂らなければ良いというわけではなく、偏ることなくいろいろな食品を摂るようにしましょう。

炎症性腸疾患と腸内フローラとの関連性から

炎症性腸疾患は、腸内フローラと腸の免疫機能のバランスが乱れることがその要因の一つとされています。腸の環境は、一朝一夕では変わりません。数年単位での長期的な食事療法が必要となる可能性が高いです。
事実、整腸剤を飲んでいるうちは体調がいいにも関わらず、飲むのをやめた瞬間に体調を崩すことが多々あります。これは、すでに持っている腸内フローラが変化しないことを意味します。つまり、良い菌を摂取して腸内フローラのバランスが良くなった状態においては、体調を維持することができますが、良い菌が無くなった途端に崩れるのは、もとの状態に戻ってしまうからです。
整腸剤だけでなく、乳酸菌飲料やヨーグルトなどいわゆる善玉菌を補充できるもので体調が良くなれば、継続的な摂取を心がけましょう。

まとめ

炎症性腸疾患と呼ばれる潰瘍性大腸炎やクローン病は未だ原因がはっきりしていない難病と呼ばれている疾患ですが、腸内フローラを整えることで症状の改善に繋がる可能性があります。腸内環境を整えるためには、魚や野菜などを中心にバランスの良い食事を心得ることが大切です。まずは、偏った食生活から見直し、根気よく継続してみましょう。

参考文献

Laura A Bolte, et al. Long-term dietary patterns are associated with pro-inflammatory and anti-inflammatory features of the gut microbiome. Gut. 2021 Jul;70(7):1287-1298.

監修者からのコメント

内科医

炎症性腸疾患の原因はまだはっきりとは解明されていません。症状のコントロールのためには、病院での治療と並行し、日々の生活の仕方を調整していくことが重要です。腸に良い食事やサプリを継続的に摂取することに加え、1日30分程度の軽い有酸素運動を取り入れることなどがお勧めです。一方でストレスとの関連も強いとされている疾患です。現代はストレス社会と言われており、ストレスを完全に除くことは難しいですが、可能な範囲で息抜きをする時間を設けましょう。