日本人にとっては“国民病”といっても過言ではない高血圧。
いくつかある生活習慣病のなかでも最も患者数が多いとされ、その数はおよそ4,300万人ともいわれています。
塩分の摂取量に気を付け、運動を定期的に行いましょうと毎日のようにメディアで叫ばれていますが、そもそも血圧とは何かご存知でしょうか。
定期健康診断や家庭用の血圧計でその数字を目にされる機会もあると思いますが、そこに示された血圧計の数字の意味があまり分かっていない人もいるかもしれません。
今回は、身近な存在だけど実は奥が深い血圧について解説します。
血圧とは
血圧とは、心臓から送り出された血流が血管の内壁を押す力(圧力)のことです。
血圧を決定する主な要因は、心臓が1回の拍動で全身に送り出す血液量(心拍出量)や血管のしなやかさ(弾力性)のほか、血液が血管に流れ込む際の末梢血管の抵抗力(血管抵抗)、血液の粘度などが挙げられます。
血圧は心拍出量×末梢血管抵抗で算出することができます。
また、血圧は常に一定ではありません。血圧を測定する時間帯や季節によって異なります。起床や食事、運動などの日常生活、精神的ストレスや測定時の室温など、さまざまな原因により変動するのです。
たとえば、運動すると一時的に血圧が上昇することがありますが、運動後、安静にすることで自然に下がります。
これは、正常な血圧の変化です。体を動かしたり、緊張したりして、一時的に血圧が上昇したとしても、普段の血圧が正常であれば問題ありません。
高血圧とは、安静にしていても血圧の高い状態が長く続いた状態をいいます。
正確な血圧を把握するためには、決まった時間に同じ姿勢をとり、リラックスした状態で測ることが大切です。
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血圧の「上」と「下」
血圧の「上」と「下」とは、最高血圧、最低血圧のことをいいます。
最高血圧は、血液を送り出すときに心臓が収縮して、血管に強い圧力がかかっている状態の値です。これを収縮期血圧(systolic blood pressure: SBP)といいます。
もし大動脈に弾力性がなければ、圧力を逃がすことなくそのまま受けることになり、血圧が上がります。
最低血圧とは、次に送り出す血液をためこむために心臓が拡張しているときの値で、拡張期血圧(diastolic blood pressure: DBP)ともいいます。
収縮期血圧と拡張期血圧の差は脈圧といい、動脈硬化の指標の1つになっています。脈圧が大きいほど動脈硬化が進行している可能性が高く、心筋梗塞や脳卒中を起こしやすいといえます。
血圧に使われる単位は「mmHg(ミリメートル・エイチジー)」。
Hgとは水銀を示す元素記号で、たとえば血圧160mmHgの場合、水銀を160mm(16cm)垂直に押し上げる力で血管に圧力をかけていることを意味します。
診察室血圧の正常値は、上140mmHg/下90mmHg未満。家庭血圧値では、上135mmHg/下85mmHg未満です。最高血圧もしくは最低血圧のどちらか、あるいは両方が正常値を上回ると、高血圧が疑われます。
高血圧がもたらすもの
高血圧の状態が長く続くと、心臓や血管に負担がかかり、脳卒中や心筋梗塞、心不全といった重篤な病気を引き起こす恐れがあります。
しかし、高血圧はほとんど自覚症状がないため、血圧計で測定しないかぎり、自分の血圧が正常かどうかを知ることは難しいでしょう。自覚症状がないまま長年経過して、気付いたときには病状が深刻化しているケースも少なくありません。
血圧測定は、体の状態を表す大切な指標です。健康のバロメーターとして、血圧測定の習慣をつけることをおすすめします。
高血圧になると、
●狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(心臓に酸素や栄養を送る欠陥が障害されて起きるもの)
●脳梗塞
●脳出血
などのリスクが高まります。他にも動脈硬化によって発症する様々な疾患の原因にもなります。
高血圧症の予防に欠かせないのは、食塩摂取量の制限です。食塩摂取の目標は、「健康日本21(第二次)」の目標値では8g未満、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満とされています。また、日本高血圧学会は、高血圧患者における減塩目標を1日6g未満にすることを強く推奨しています。
日本人の食生活は食塩が多くなりやすい特徴があります。
全体的に薄味にし、かけしょうゆ、かけソースなどの習慣がある人は、つけしょうゆ、つけソースに改めるだけでも食塩摂取量が少なくなります。
また、漬け物をたくさん食べる習慣のある人や、味噌汁を1日に2杯以上のむ人は、1回の量を減らすことが大切です。ラーメンなど麺類の汁を全部飲んでしまうと、それだけで6g近い食塩をとってしまいます。
一方、野菜や果物、大豆製品に豊富に含まれるカリウムには腎臓から食塩を排泄しやすくする働きがあります(腎臓の病気がある人はカリウム摂取の制限が必要な場合があるので、主治医と相談する必要があります)。また、カルシウムにも血圧を安定させる効果があります。カルシウムは、牛乳や乳製品から摂取すると、より吸収率が高いことが知られています。これらを組み合わせ、無理のない減塩を長く心がけることが高血圧予防につながります。
まとめ
いかがでしたか。高血圧は自覚症状がほとんどなく、自分では気づかないので、毎年健診を受けることが極めて重要です。健診で行う心電図や眼底検査では、高血圧による長期の影響がわかることがありますので、これらの検査を受けることも有用です。また、家庭用血圧計を購入し、自宅で毎日測ることも、高血圧予防の観点から重要です。
引用元一覧
- https://www.healthcare.omron.co.jp/zeroevents/bloodpressurelab_basic/contents1/111.html
- https://pharma-navi.bayer.jp/adalat/pharmacist/basic/01/t05
- https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-003.html
- https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijyun.html
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監修者からのコメント
内科医
塩分の摂取量は自分で思っているより多いことがよくあります。塩分の多い生活に慣れてしまっていたり、加齢に伴って塩味を感じにくくなることがあるからです。客観的に1日の塩分量を調べるため、病院での尿検査や、市販薬などで尿から1日の塩分量を推測する方法もあります。減塩を心がけるとともに、適度に汗をかくくらいの有酸素運動や、減量することも血圧を下げるために有効です。それでも血圧が下がらない、または薬でもなかなか下がらないなどの場合は、ホルモン分泌の異常による高血圧の病気である可能性もありますので、主治医の先生に相談してみてください。